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気が付くと一面茶色の世界だった。どうやら地中のようだ。壁には矢印が書いてあり、その矢印にそって、穴を掘り進んでいるみたいだ。
「その先を抜けると後は真っ白なの。続きが描いてないわ」
「どうして君はこの絵本を描こうと思ったの?」
僕がそう言うと、彼女はじっと僕の顔を見つめ、ぷっいと前を向いて進みはじめた。僕は慌てて後を追う。
彼女を追っていると、彼女が静かに語りはじめた。
「始めは、お母さんを喜ばす為に書いた、一枚の絵からだった。その絵は満開の星空で、私とお母さんが、星を見上げている。その絵をみたお母さんは褒めてくれて、それが嬉しくて、その絵を元にした絵本を作る事にしたの。その絵は最終ページにする予定。見たこともない、私とお母さんだけの世界を旅する絵本を描いたら、お母さんはまた褒めてくれるんじゃないかって、それだけを思って描いた。お母さんに、私がいた事を忘れないように、だから私は描くの」
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