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幼い頃、母方の親族の挙式に列席したことがあった。
よそゆきの晴れ着と、粛々としたその場の雰囲気に慣れずに、俺と清花は屋敷の中を宛も無く彷徨っていた。
俺自身のまだ幼い手で、清花のさらに小さな手を握り。
何をするでもなく、
ただ忙しそうな大人達の邪魔にならないように。
行き当たった部屋の、僅かに開かれた襖の隙間に引き寄せられるように近づいて中を覗くと…
そこは、
花嫁の控えている部屋だった。
2人共、無意識に部屋に足を踏み入れる。
開け放たれた縁側から、更にその向こうへと広がる整えられた庭園。
その美しい風景の一部のように。
花嫁は静かにそこに佇んでいた。
眩い純白の白無垢を纏った、
凛とした花嫁に言葉を失ったのを覚えている。
「…きれい…」
清花が、俺の手をきゅ、と握りしめて
呟いたことも。
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