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突如、炎が清水直緒の視界を覆い尽くした。
放課後、見慣れた教室が、煉獄へと変貌する……墨液のように黒暗々とした炎によって。
その光景が眼窩に入った瞬間、直緒は、
「っな?」
と、ただただ驚き、戸惑った。
黒、ひたすら黒の世界の中に、直緒は佇立していた。
「誰かっ?」
喚いても、分厚い炎の壁のせいで、返事すら返ってこない。無論、助けなんか来る訳がない。
呆然と立ち尽くす直緒をよそに、頻りに燃える、黒炎。
漸次炎の勢いが強くなっていくが……、
「あ、熱くない……」
不思議なことに、直緒の身体には火熱が一切感じられず、皮膚も爛れなかった。皮膚が爛れなければ、床、机、椅子、あらゆる木製品でさえ焼け焦げない。
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