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「……女の子だ」
直緒は見た、
マイナスベクトルのダークなオーラを醸し出す、夏服セーラー服姿の女の子を。
肩より少し長い、柔らかな質感を持った、寂莫の夜空に浮かぶ月の光のようなブロンドが、
火風の余韻に靡いていた。
白魚のように繊麗な右手の指が、黒炎を斬った、刀の柄を握っている。
プリーツスカートとオーバーニーソの間に絶対領域を覗かせた彼女は、凛と張った碧眼をぎょろつかせながら、直緒を見詰める。
直緒を見詰める彼女は、さながら妖精のようでもあり、悪魔のようでもあった。
簡潔に言うと、稀代の美少女……、
一見しただけで眩暈がしそうな、それぐらいの。
しかし、彼女はせっかくの美貌を隠すかのように防病菌用のマスクを着用していた。
黒炎が漂動する中、刀の穂先を輝かせ、仁王立ちするマスク姿の女子生徒。
無論、直緒と彼女はお互い初対面の身。顔を合わせる共通の謂れなんかない。
直緒は再度、
「……誰なの……?」
と、当の彼女に問い質す。
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