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「勇敢てか――ソイツはただ無知なだけちゃうん? 判ってて立ち向かっているとしたらば、酔狂な輩かホンマもんの阿呆や」
少年がはっ……とした表情を向けた先には、流暢に関西弁を操る少女が、器用にペンを回している。その少女が言葉を発した数秒後、辺りは増して騒然となり、終いには机上で物議を醸し出す学徒も現れるのではないかと教諭は危惧していたが、そんなことはなかった。
「じゃあ三皿(さんのざら)は勝てない戦はしないのか?」
「なんやて? 多々良、もういっぺん言ってみ」
「三皿さんは……勝てない戦はしないのかねぇ?」
と後席から野次と似て非なる声が飛びかかってきた。三皿と呼ばれる少女は多々良という少年に向かってニコリと笑顔を見せるが、手前の少年からしてみればその笑顔に恐怖すら感じていた。何故なら――口元が笑っていないからである。
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