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「人間にはロマンとリアルが必要なんだよ、三皿さん。
現代人はバーチャルの世界に呑まれつつあるでしょう? だから、刺激……いや痛快さが必要なんだ」
「人生の三分の一も生きてないヤツがロマンやリアルなんてのを謳うなよ」
「そこ、うるさいぞ!」
「せや、中地の言う通りやで多々良。 うちらはまだ十数年……十数年しか生きておらへんのや!」
と和気藹々と議題を進めることは到底出来ないであろう。そんな展開にも臆す事の無い白髪の老人教諭は出席簿を団扇代わりに数回扇いだ後、教壇手前の机を軽く叩いきながら
「これは宿題ねー」と一言呟いてから教室を出ていってしまった。
「…………」
「行っちゃった、田原」
「笠本! 授業終わったから起きて!」
教諭がもたらした議題はたったの五十分では何ひとつ解決することは出来なかったが、
依然として教室内は数多の声が飛び交い、端から見てみれば賑やかに見えた。それがこの「議題」についてなのか、それ以外のことか、詳細は定かではない。
教壇の手前の席に座っていた少年は伸びをし
「夏休みの宿題か」と言いながら颯爽と通学鞄を肩に掛け教室を後にした。
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