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これが、現代の食事風景である。食卓に並ぶ、多彩な食べ物。種類こそ、豊富であるが、これらは全て一つのモノから切り出されたのだと信じられるだろうか。
この食べ物が発見されたのは、あまりにも突然だった。
宇宙から飛来なら謎の箱。箱は細長く奇妙な形をしていた。突然の出来事に、人々は右往左往していたが、箱から漂う素晴らしい香りにたまらず、箱を開けてみた。その箱の中から発見されたのが、この食べ物の塊だった。
当初、危険性があるかないかを調べるため、宇宙センターに運ばれた。すぐに、危険性がないと判断されたが、地球には異質なモノだ。安易に口に入れられるはずもなかった。
「これは、非常に栄養があり、ヘタな食べ物なんかより良いモノかもしれません」
動物実験を経て、それを口にした研究員の発言。その言葉に、人々の多くは興味を持った。
普段、自分達が食べているモノより良い食べ物かもしれない。どんな味がするのだろう。
歯ごたえは?味は?
人々が食べ物に対する興味は尽きなかった。
気付いた時には、手遅れで大勢の人がセンターに押しかけ、食べ物を食べさせろと要求してきたのだ。初めは、貴重な研究材料ということで拒否していたセンターの職員も、その食べ物から漂う香りに興味を惹かれ、
「一般人を追い返す代わりに、それを食べさせてください」
なんて言い出してきた。
困ったのは食べ物を試食した研究員達だ。この食べ物が幾らでもあるものなら、研究材料だけ残して、提供してもいい。だが、これは有限なのだ。とてもじゃないが、提供するのは無理だった。第一、自分達だって、まだ食べたかった。
どうやって、不満を抱える人々の気を紛らせるか考えたが、生命の根源ともいうべき『食べる』ということから、興味を逸らすのは不可能に近い。金を渡して、解決するという簡単な問題ではないのだ。
しかし、そんな研究員達の悩みは、しばらくして解決した。また例の食べ物が詰まった箱が飛来してきた。
以前と同じ箱が落ちてきたことが知れ渡ると、人々はすぐさま、箱へと殺到し、食べ物を奪いとった。
一度でも危険性がないと分かると、政府の抑止力は弱い。食べ物は安全で、尚かつ、宇宙から飛来したモノであり、何かの犯罪触れるという訳ではない。第一、政府の人間ですら、裏から手を回してでも、その食べ物を食べたがっていた。
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