食糧事情

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 こうして、人々はこれまでの食生活を一新する食べ物を手に入れた。その後も、箱は定期的に地球にやった。初めは数が少なかった箱も次第にその数を増やした。  一体、誰が何の目的、こんな素晴らしい食べ物を地球に届けてくれるのか。そんな疑問もあったが、食べ物は味は、そんな疑問ですら忘れさせるほどに素晴らしいかった。美味しい食事の前では、無粋な考えなど誰もできない。  この食べ物には、誰もが感心した。見た目もだが、歯ごたえや香りに決まった法則性はなく、食べる度に違うモノを食べている気分になる。食べ物の中には、液状になっているのもあって、飲んでみると、その味はやはり、多彩で法則性はない。果汁にも似た味や香りもあって、ジュースとしても子供達に喜ばれた。また、発酵を促せば、酒にもなることが分かり、多くの愛酒家にも喜ばれた。  いつか、これが無くなるのではないかと懸念する声もあったが、今のところは問題はない。箱は定期的に地球へとやってくる。きっと、これは、宇宙からの贈り物なのだろうと人々は納得していた。  一方、研究員達と言えば、食べ物が入っていた箱の方を調べていた。けれど、いくら調べてみても、分からないことだらけで首を傾げるだけだった。 「しかし、この箱・・・」 「気密性は高いけど、それほど希少な金属を使っている訳でもなく、動力も精々、墜落時の衝撃を和らげる程度だ」 「これじゃあ、文字通り地球に落としているだけじゃないか」  何か特別な細工がしてあるのではないかと思い、箱を調べてみるも、箱は箱のままだ。何かに特化しているという訳でもない。それに、造りも丁寧ではない。その場凌ぎで造られたような急ごしらえの箱だ。食べ物を届けるには、あまりもお粗末な箱なのだ。
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