言えないサヨナラ

13.

「ストップ」

そう言って、男の人の背中を叩く。

それなのに、何故だかこの人はあたしを離そうとはしない。

バッグは膝の上、パスポートとチケットはコートの中のポシェットに。

この際、着替えが入った小さめのスーツケースは諦めるとして、この状況をなんとかしなくちゃ。

意を決して、大声を出そうとしたその時だった。

「ボブ？」

頭上で聞き覚えがある、懐かしい声がした。