1.井上家の事情

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またか、と思いつつ「幾ら?」と聞けば、遠慮気味に「一万円」と右手を差し出したバカ兄貴。 「却下」 「じゃあ、五千円」 「却下」 「ええっ、そんなぁ。環ぃ、お願いします」 「この前の三千円もまだ返してもらってないし」 「わかった。千円返すから、五千円貸して」 このバカ兄貴は少女漫画の王子さまのように、にっこりと微笑んだ。 妹にお金を借りる兄なんて本当情けない。 そう思っても、あたしはハル兄に甘いのか、こんな風にキラキラした瞳で見詰められると、何故かイヤだと言えなくなってしまう。
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