1.井上家の事情

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     渋々お財布から五千円を取り出して、テーブルの上に差し出すと、ハル兄は目にも留まらぬ速さで手を伸ばした。 「千円、返してからよ」とその手を叩く。 同時にチッと舌打ちの様な音した。 ハル兄を睨み付けると「怒っちゃいや」とまたオネエになった。 「……バイトぐらいしてよね」 「わかってるって」 いや、全然わかってない。 バイトしてもバイト先の女の子に手を出して、直ぐにクビになって帰ってくるし。 今までの最長で3週間だっけ? あの時のバイト代も結局貰ってないよね? 「あのさ、いっその事、ホストクラブでバイトしてくれない?」
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