D・R

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兄星の重力を脱した宇宙船は弟星の軌道に乗り、そこから何周かしながら、着陸するのに適した地点とその為の進入角度や速度を割り出した。そのデータを宇宙船にセットして自動操縦に切り替えて弟星への突入に備えた。  ほどなくして、宇宙船はセットされた地点に達すると、徐々に角度を変えて弟星に突入を開始した。  十数年前に幾度となく人類を拒むように人類の進出を阻んできたこの星も、今回は以外な程すんなりとその進入を許し、宇宙船は大気圏に入ると減速を始め、やがて地上へと着陸したのである。  隊員達も、その順調さに拍子抜けしてしまう程だった。兄星に長年留まっていた隊員が、 「科学の進歩には目覚ましいものがあるな。私達の乗ってきた宇宙船などは、兄星でさえ着陸に難航して故障してしまったのに……」  そう言われると、他の隊員達も科学者から聞いていた性能の違いを改めて実感したのだった。  科学者達が言うには、この宇宙船と旧型の宇宙船とを比較すると、エンジンの出力は二倍になり、燃費や耐久性も向上したので旧型は地球と双子星のどちらかとを往復するのが限界であったのに対し、新型は地球と双子星のどちらかを二往復してもなお、余力があるのだと口を揃えていた。  実際に兄星に難なく着陸し、そこからまた自力で飛び立って、こうして困難と思われた弟星にも無事に着陸することができたのだから。  そのことに感心していると一人の隊員が、はたと気づいたように、 「無事に着陸できたことを地球の基地に報告しなくては」 そう言って交信機で報告すると共に、弟星の調査指令を受けた。  隊員達は、早速無人探査船のデータを基に作成された地図を映しだして、現在の自分達の着陸した地点と、文明の痕跡らしき物が確認された場所との距離を測ってみた。どうやら、徒歩での移動にはやや距離があり過ぎるようだ。  
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