D・R

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それを見て、隊員達は驚いた。特に驚いたのは兄星に留まっていた隊員達で、 「移動するのに手をついている。我々が兄星に辿り着いた時の状態と同じだ。我々の仲間が一緒に暮らしていると言っていたのに、少しも進歩していないなんてどういうことだ」 兄星に留まっていた隊員の一人が言うと、別の隊員が 「いや、彼らはたまたま以前の癖が出たんだろう。我々人類だって、一度に全ての者が新しいことに習った訳ではないし、何しろ人類が来てから十数年しか経っていないのだから彼のように、つい昔の癖が出てしまう者もいるんだろう」 その隊員の意見に皆納得し、取り敢えずその彼の後を追った。  細い獣道をしばらく進むと、谷合いに出た。そこには、大勢の彼と同じ姿をした者達が集まっていた。そのさまは、兄星で見かけた集落というより、むしろ群れと呼んだ方が近い感じがした。  その集団のところに着くと、おもむろに 「着いたぞ。今、族長に伝えてくるから此処で大人しく待っていろ」 そう言い残して、彼の姿は奥の方に消えた。  隊員達は、そこで待つ間に彼の仲間の行動を眺めて暇を潰していたが、彼らは誰一人として二足歩行をせず、手をついて移動していることに驚いた。 「どういうことだ! 彼だけでなく、皆手をついて移動していぞ」 「それに生肉をそのまま食べているし、とても兄星と同じ種族とは思えない」 「どちらにも我々人類がやって来たはずなのに、この差はどういうことだ」  そう隊員達が口々に話していると、先ほど奥に消えた彼と数名の者がやって来た。その中には、十数年前に消息を絶ったと思われる隊員の姿もあった。  しかし、その隊員達も手をついて歩いて来たのだ。驚いて、どうしてそんな格好をしているのかを尋ねると、その内の一人の隊員が話し出した。
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