桜と僕と彼女。

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あるとき僕はこの場所に だいすきな彼女を連れてきた。 「わぁ…すごい…! 綺麗な桜だね…!!」 桜を見るなり 駆け出した彼女は 嬉しそうに笑う。 彼女の笑顔を見ていると なんだか僕も 嬉しい気持ちになった。 「ふふ、綺麗でしょ? この樹はね、 ずーっと昔からこの村に 春を届け続けてきたんだ」 「へぇ… 毎年この桜を見に来るの?」 「もちろん」 「じゃあこれからは 私も一緒に見に来たい! …ダメかな?」 彼女は不安げな顔で 僕を見る。 すぐに、そうだね、 とは言えなかった。 原因不明の 病気を持つ僕には、 あとどれだけ時間があるのか わからない。 もしかしたら 今すぐ彼女と お別れをしなければ ならないかもしれない。 "一緒に"という 約束をしたら、きっと 彼女を悲しませてしまう。
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