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「彼女はね、ここに通えない患者の世話もしてたんだ。その患者の一人が亡くなって、精神的に参っちゃったみたいでね……。もう働けないと言って辞めてしまったんだよ。」
「そんな……他の患者さんを見捨てて……?」
「馬鹿言っちゃいけないよ!彼女は患者の為を思って辞めたんだ!この状態でミスしたら大変だからと悲しそうに言って!この仕事は彼女の天命だと言ったろう!?辞めたくて辞めたんじゃ無いんだよ!」
その迫力に謝罪して。
憤慨する医師から彼女の家を聞き、診療所を後にした。
彼女の家を見つけ、木の上から様子を見る。
どうやら一人暮らしのようだ。
「あ、出て来た。」
家から出て来た彼女はため息をつき、森へと出掛けた。
薬草を摘みに行ったらしい。
後を追い、彼女を眺める。
どことなく元気が無いが……精神的なショックのせいだろう。
「あれ……?泣いてる……?」
薬草を摘みながら、彼女は泣いていた。
「天職……。好きな仕事が出来ないから泣いてるのか……。」
元気を出してとつぶやいて、名残惜しいが天界へと帰る。
それからしばらく忙しく、下界に降りる機会が訪れなかった。
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