9人が本棚に入れています
本棚に追加
「あそこが診療所よ。もう少し我慢してね。」
重い鷲を抱え直しながら、ようやく到着した。
「アナスタシア、遅かったじゃないか。ん?その鷲は?」
彼女を出迎えたのは年配の男性だった。
「ごめんなさい、先生。薬草を採ってたら泥まみれになっちゃって水浴を……。この子、狼にやられちゃって……。」
「狼!?アナスタシア、怪我は無いか!?」
「え?あ、私は平気です。この子が追い払いましたから。」
「そ、そうか。でも何で狼が……。」
「多分、この子の仕留めた兎を狙ったんだと思います。あ、せっかく仕留めた獲物、置いて来ちゃったわね。ごめんね、お腹空いてるでしょ。」
それを聞いたガルダが焦り出す。
あの兎には病原菌が入っているのだ。
死骸を片付けなければならない。
「だめよ暴れちゃ!治療するんだからじっとして!」
それどころではないと暴れるガルダ。
「いたっ!」
嘴が当たり、腕に傷がついてしまった。
じわっと滲み出た血に動きが止まる。
人間を傷つけてしまった……。
「お願いだから……おとなしくしてね……。」
やはり野生の鷲なんだとビクつきながら、恐る恐る手当てをするアナスタシア。
何とか治療を終え、ガルダを小屋の中に入れた。
.
最初のコメントを投稿しよう!