下界での任務

6/10
前へ
/34ページ
次へ
「あそこが診療所よ。もう少し我慢してね。」 重い鷲を抱え直しながら、ようやく到着した。 「アナスタシア、遅かったじゃないか。ん?その鷲は?」 彼女を出迎えたのは年配の男性だった。 「ごめんなさい、先生。薬草を採ってたら泥まみれになっちゃって水浴を……。この子、狼にやられちゃって……。」 「狼!?アナスタシア、怪我は無いか!?」 「え?あ、私は平気です。この子が追い払いましたから。」 「そ、そうか。でも何で狼が……。」 「多分、この子の仕留めた兎を狙ったんだと思います。あ、せっかく仕留めた獲物、置いて来ちゃったわね。ごめんね、お腹空いてるでしょ。」 それを聞いたガルダが焦り出す。 あの兎には病原菌が入っているのだ。 死骸を片付けなければならない。 「だめよ暴れちゃ!治療するんだからじっとして!」 それどころではないと暴れるガルダ。 「いたっ!」 嘴が当たり、腕に傷がついてしまった。 じわっと滲み出た血に動きが止まる。 人間を傷つけてしまった……。 「お願いだから……おとなしくしてね……。」 やはり野生の鷲なんだとビクつきながら、恐る恐る手当てをするアナスタシア。 何とか治療を終え、ガルダを小屋の中に入れた。 .
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加