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そして別れの時は来た。
翼を広げても痛みはない。
羽ばたいてみる。
飛べそうだ。
「すっかり完治したわね。さようなら、鷲さん。たくましく生きるのよ。」
にっこり微笑み頭を撫でる。
その笑顔に後ろ髪を引かれながら、ゆっくり上昇するガルダ。
手を振る彼女を見下ろしながら旋回し、かぶりを振って森へと向かう。
手頃な枝を見つけ、羽を休めた。
「帰りたくないな……。このままもう少し下界に……。」
「だめですよ。」
その声にビクッと振り向く。
隣の枝にヴィシュヌが立っていた。
「ヴィ、ヴィシュヌさん……。どうしてここに……。」
「何となくです。ガルダ、相手は人間ですよ?また同じ事を繰り返すんですか?」
うっと言葉に詰まる。
見透かされていた。
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