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「よく、4人で過ごしてた」
中を見てあたしはますます違和感を覚える。
入ったのはリビングのような部屋だったが、その中にはこれといって特徴的なものがない。
ものが極端に少なすぎると言ってもいい。
人が使っている気配がない。
静かすぎる部屋。
そう、それも、まるであとからすべて消し去ったかのような…
結人さんが換気のために窓を開けたので、とりあえずそれに倣い他の窓を開けた。
春とはいえまだ肌寒い風が、今は心地よかった。
真っ白いレースのカーテンが風に揺れる。
「4人って?」
あたしは気になったことを素直に尋ねていた。
結人さんは先程お父さまが連れてきてくれたと言っていた。
それが結人さんの家族だとしたら、結人さん、お父さま、お母さまと、人数が合わない。
結人さんは一人息子のはずだから。
――では、4人っていったい…
「俺と親父、それに怜一郎と怜一郎のお母さんだよ」
言われた言葉はあまりにも意外で、あたしは一瞬次に言うべき言葉を見つけることができなかった。
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