7-微かな崩壊の音

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「…そんな質問、卑怯」   あたしの言葉に、結人さんは笑った。 急に笑い出す結人さんに、あたしは怒りもせず、ただ黙って見ていた。 結人さんは笑っている。 笑っているはずなのに。 …その声を悲しいものだと感じ、胸が締めつけられるのはなぜだろう? 「…あぁ、一緒だ」   笑い声の合間に、結人さんは自嘲気味に呟いた。 なにが一緒なのか訊こうと開けた唇に、なにかが触れる。   …それは、2度目のくちづけ。   触れるだけのくちづけは、静かに終わり、現実味をなさない。 ただ静かに結人さんの目を見つめ返すあたしに、彼は笑いかけたようだった。 「あんちゃんがいけないんだよ?」   少し背をかがめて、こちらを覗きこむ。 結人さんの色素の薄い瞳の中に、戸惑うあたしの顔が映る。 「…どうして…」   どうして、あたしを惑わせるようなことばかりするの。 「ごめんね…」   ひどいことをされたのはあたしの方なのに。 どうして、結人さんがそんな顔をするの。   謝る結人さんは、なんだか今にも泣きそうな顔をしていた。 あたしは、そんな結人さんに返す言葉が見当たらず、戸惑う。   その隙に、結人さんはあたしに背を向けていた。 あたしがかける言葉を見つけるより先に、「またね」と言って、車に乗ってしまう。 結人さんを乗せた車は、あっという間に見えなくなってしまった。
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