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高等部の校舎を少しだけ離れ、木漏れ日の射す並木道に入ると心地の好い風が頬を撫でた。
今日はとても気持ちが良い。
そう思いながら木々の間から見える空を見上げると、何やら後ろの方から叫びながら近付いて来る奴がいる。
「マ~サ~キ~ッ!」
良からぬ気配は承知の上。
振り返るまでもなく、舞咲はその場にしゃがみ込んだ。
「ぬわぁぁぁぁ!?」
まぁずいぶんと人の上を飛び越えた挙げ句、派手に顔から転がったものだ…。
「痛いよ舞咲ぃ…」
「…顔から行ったからね」
赤くなった鼻先をさすりながら涙目になっているのは須藤響(すどうひびき)。
可愛かったり、綺麗だったりする女子を見付けては抱き付く、学内では有名な変態女子。
「あ~ぁ、鼻先赤くなってるよ」
「いい加減、その変な癖治さないとね?響」
背後からする声に顔を上げると、ボーイッシュな長身女子と清楚なやんわり女子が呆れ顔で響と舞咲を見下ろしていた。
コンビニ袋を提げている長身女子、真渕葎(まぶちりつ)は陸上の特待生で中途入学。
ルックスから[王子]なんて呼ばれ、メディアや女生徒から注目を浴びている。
片ややんわり女子、近江飛鳥(おうえあすか)は学年次席の優等生。
清楚で落ち着いた雰囲気を持ち、誰にでも優しく振る舞っている姿は男子生徒からの人気が高く、中等部の頃から有名だ。
そんな舞咲も容姿端麗、眉目秀麗と周りから注目を浴びる程有名で、いい加減ウンザリしている。
元から人の注目を浴びるのを好まない性格で、どちらかと言えば一人が好きだった。
なのに、いつの間にか有名人ばかりと親しくなったのは[あの子]が声を掛けて来てからだった…。
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