受け継がれし記憶

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「癖で済まされるこっちの身になってから言ってよ、飛鳥…」 「あら?私は嬉しいけど…舞咲の拒む理由は何?」 理由…。 女同士だからとか、そんなつまらない事は言わない。 暑苦しい?…まぁ、時と場合によるか…。 やっぱり強いて言えば… 「面倒くさいから嫌」 「ンニャ!?…舞咲ぃ」 そんな捨てられた子犬の様な目で見つめられても… 言動は猫だが…。 「やっぱり嫌がっている人にはやめようね?響」 そう言って座り込んでいる響に手を差し伸べて微笑む飛鳥。 端から見れば、響にとって飛鳥はお母さんの様な存在に見えてくる。 「でも、須藤の事が嫌いな訳ではないだろ?」 葎が手を差し伸べて聞いてくる。 「………まぁ」 舞咲はその手を取らずに立ち上がった。 先程から近くに居る数人の生徒たちの前で[王子]の手を取るのは気が引けるし、これ以上の注目は避けたい…。 割合的に女生徒の方が多いし…。 「本当か!?」 一気にパァッと明るい表情になる響。 裏表なく、誰に対しても何に対しても真っ直ぐで素直な所は嫌いではない…が 「嫌いじゃない…」 「舞咲!」 「ウザいけど」 「っ!………飛鳥ぁ、舞咲がイジメるよぉ~」 「よしよし」 「ハハハ…しかし、三谷は素直じゃないな」 「………響とは違うよ」 「私はそれ以前の問題だと思うが?」 客観視出来るやつは、心まで見えているのではないかと時々思わせる。 全てを隠しているつもりでも、それは全て見透かされていて…かと言って別にどうこうしようとかなんて考えてもいなくて…ただ見守られている様な安心感を与えてくれる。 舞咲にとって葎はそう言う存在だ。
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