受け継がれし記憶

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突然の響の声に顔を上げて、飛鳥と葎の視線を辿る。 そこには木陰に佇み、少し長い髪を靡かせて空を見上げている瀬戸内静那(せとうちしずな)が居た。 四季聖学園生徒会総会長と言う肩書きを持ち、学年首席でもある彼女の姿は美しいとしか言い表せない程の気品に溢れ、全生徒の憧れの存在…。 「し~ず~っ…グハッ!?」 舞咲の横を走り過ぎようとする響のネクタイを掴んで制止させる…。 「…舞咲、さん…?」 「いい加減にしろ…」 「…はい、すいません」 「瀬戸内~!」 葎が呼び掛けながら歩み寄ると、飛鳥と共に響のネクタイを掴んだまま舞咲も歩み寄る。 真っ直ぐと静那の姿を見つめたまま…羅壱が走り抜いて行った事にも気付かずに…。 こちらに気付いた静那は、微笑みながら軽く手を挙げた。 「昨日の書類、まとめられたかしら?」 「うん。飛鳥が解りやすく整理してくれたお陰でさっき終わったの。午後からやっと授業に出られる」 「二、三週間くらい忙しかった様だな?寮の出入りを見掛けていたよ」 「家には帰っていたけど、やっぱり遅くなったりするとね…」 そんな会話を聞きながら、いつの間にか響のネクタイから手を離し、舞咲はずっと無言で静那を見つめていた…。 そう、昔から静那への声の掛け方を知らないのだ…。
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