341人が本棚に入れています
本棚に追加
『不用心だな…。』
玄関に入り、明るい部屋まで進む。
仕切られたガラス戸。
そこから、フローリングにしゃがみ込むナオエの姿が見えた。
扉を開け、ナオエの横に座る。
「…何、してんだよ。」
ナオエは、また出来た新しい傷に、消毒液を垂らしていた。
項垂れたまま、こちらを向こうとしない。
「…お前さ。 鍵ぐらい、掛けておけよ。 一人暮らしなんだから。」
そう言って、準備されていたガーゼを取る。
ナオエの腕を取り、傷の部分にそれを巻いた。
「…ユキが、来てくれると思ってたから。」
「…。」
ナオエは大人しく、俺に治療させた。
気を引くために、傷を作ったなんて…
笑える理由じゃない。
せっかく治そうとしていた傷も、また濃いものに変わってしまっている。
最初のコメントを投稿しよう!