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手当てし終えると、ナオエは俺の肩に頭を乗せた。
「…。」
「…。」
二人とも黙ったまま、目の前に広がる赤い跡に目を落とす。
「…やっぱり、ヤダな。 この位置を、誰かに譲るなんて。」
「…。」
ナオエがそう呟くと、弱々しい声で話し続ける。
「別に、ユキを縛っておきたい…とか。 駆け引きがしたい…とか。 そう言うことじゃなくて…。」
「…何?」
「知っておいて欲しいな…って。」
「知る?」
ナオエは、呼吸を整えるように、大きく息を吐く。
血の気が引き、冷静になっているのか。
それとも、貧血が起こっているのか。
いつになく、ナオエが弱い生き物に思えた。
「私、今まで…ユキの1番側にいる異性だと思ってた。」
「…。」
「理由は知らないけど…ユキは女の人のこと、煙たがってるし。」
「…。」
「このまま、側に居れたら良いな…って思ってた。」
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