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男は眠るよう努力はしてみるが、生憎、呪文が聞こえてくると落ち着いて眠ることができない。眠りを呪文によって遮られてしまうのだ。耳を塞いでも無駄だ。頭にガンガン響いてくる。
文句を言えば、それは倍となり騒音という形で男に返ってくる。まさに、男は八方塞がりの状態なのだ。
今日は宗教家の元に、仲間がやってくる日だ。いつもより、大きな騒音が予想できた。しかも、盛大に男の部屋の前まで来て呪文を唱え始めた。
男の部屋の周りでは、和尚が門下である僧衆を引き連れ立っていた。和尚は大きな声で言うのだ。
「己!ここに住まう悪霊よ!いい加減に立ち去れ!さもなくば、我が法力を持って蹴散らして、輪廻の輪より外してくれようぞ!」
そして、和尚と僧衆によるお経が聞こえていた。
部屋の男は一段とうるさく聞こえてきた呪文に嫌気が差していた。
「いい加減にしてくれよな。東洋の宗教だか、何だか知らないけど、キリスト教徒だった、俺には意味が分からないのだから。頼むから大人しく寝かしておいてくれよ・・・」
金髪で鼻が高い白人の男。その霊は小言を呟き、大きなアクビを一つして、耳を塞ぎ目をつぶるのだった。
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