騒音

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 しばらく前に、挨拶もしないで隣に越してきた相手。越してきたその日の内に、どこぞの宗教の呪文が聞こえてきた。そのあまりに、耳障りな音と声に、男は怒り文句を言いに行った。  その日からだ。隣が、男に対抗するようになって毎日のように怪しげな呪文を唱えたり、太鼓を叩くようになったのは。  最近では、少しは静かになった方であるが、やはり騒音は止むことがなかった。  退屈な日々も嫌であるが、ここまでうるさい日が続くとウンザリしてくる。管理人に苦情を言うも取り合おうとしてくれない。いくら、宗教に自由があるとはいえ、他人まで巻き込むような真似だけはやめて欲しいものだ。  男は近所の爺さんに、その事を相談しにいったこともあった。 「何?毎日だと?」 「そうなんですよ。全く参りましたよ。こうも、うるさくては静かに眠ることもできない。時には、隣の部屋に同じ宗教の仲間が集まって一日中、呪文を唱え続けているんですよ。意味も分からない呪文だけど、今ではすっかり覚えてしまいましたよ。毎日、聞かされては」 「それは、それで、いい勉強になるではないか」 「こんな勉強、役に立ちませんよ。怪しげな呪文を聞いて腹に溜まりますか?何なら、ご隠居にも呪文を聞かせてあげましょうか?」 「いや。遠慮しておこう」  いい勉強になると言う爺さんも、さすがに呪文を聞く気にはなれず断ってくる。爺さんに相談しても、この騒音を解決する手段は見つからず男は溜息をつくのであった。
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