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食後。
食器を片付けてからすぐに入浴を済ませると、俺はいつもより早めにベッドに入った。
『現地実習』での目的地である北西の世界都市、『イングラム』は、『ロト』からは距離がある。
そのため、明日は朝早くターミナルへと向かわなければいけないのだ。
しかし、首まで布団を被った俺はなかなか寝付けず、しばらく暗い部屋の天井の片隅を見つめていた。
「…………」
それから、俺は首をベッドの右側に位置する勉強机に向けた。
そこには、『イングラム』へと赴くために、予(あらかじ)め用意しておいた荷物が置かれている。
……といっても、数日分の着替えと財布以外は、筆記用具にノートと、あとは教科書くらいしか入っていない。
『現地実習』は、あくまでも授業の一環なのだ。
それに、俺は『イングラム』に遊びに行くわけではないのだから。
と、その時……。
一瞬、脳裏にジャンの憎たらしいニヤケ面が過(よぎ)った。
「…………っ」
僅かに沸き上がった胸のむかつきを振り払うように俺は頭まで布団を被ると、寝返りを打った。
そして目を瞑ると、膝(ひざ)を抱えて丸くなった。
だが、早く寝ようとするほど逆に寝付けなくなり、そのせいで苛立ちが募って更に寝付けなくなるという悪循環に陥ってしまい、結局眠る事が出来たのは、それから三時間以上も後の事だった。
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