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ひんやりとした空気が立ち込める、早朝のロトのターミナル。
まだ時間も早く、人影も疎(まば)らなその場所で、朝早く学院から出た俺とシーマ。そしてルキとロキの四人は、『イングラム』に向かうための車両待ちをしていた。
現在、ターミナルに備え付けられている四人掛けのベンチに、左からシーマ、ルキ、俺、ロキの順番で腰掛けている。
そんな中で、
「ふぁ……」
俺の口から、思わずあくびが漏れた。
それを押さえるべく、片手を口元へと当てる。
……すると、
「あのっ、レオンさん」
「ん? ルキ。どうしたの?」
目尻に滲(にじ)んだ涙を手の甲で拭いつつ、隣から俺を見上げるルキに聞き返した。
「大丈夫ですか? 少し、お疲れ気味のようですけれど……」
シーマの話し方を真似たような丁寧な口調。ルキは、その幼い声音に心配の色を滲ませて俺に尋ねた。
それに対して、俺はルキの、シーマによく似た大きな切れ長の黒い瞳を見つめたまま、安心させるように笑みを浮かべ、
「ううん、大丈夫だよ。ちょっと寝不足気味なだけだから。ありがとう、ルキ」
俺がなんでもないようにそう言うと、ルキの顔から心配そうな表情が消え、代わりに安堵の表情が浮かんだ。
と、その時……。
「寝不足? 楽しみで眠れなかったんじゃねーの?」
俺の顔を覗き込みながら、ルキとは対象的な、面白がるような調子でロキが言った。
「……ロキ」
「なんだよ」
俺はそんなロキの顔へと両手を伸ばすと、その柔らかいほっぺたを両側から摘(つま)んで引っ張りつつ、
「その台詞。お前にだけは言われたくないぞ」
「いっ、いひゃいらろ! はらせこら!」
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