世界都市

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しばらくの間、俺はジタバタと抵抗するロキの顔を引っ張り続け、やがて当のロキが涙目になって来た辺りで俺は手を放した。 「いっ、いてぇ……」 僅かに赤くなった両頬を擦(さす)りながら、ロキが恨みがましい視線で俺を見上げて来る。 ……流石に、すぐに手を出したのは少々大人気なかったかと反省しつつ、俺はもう一度ロキの顔へと手を伸ばした。 「っ!」 すると、ロキはビクリと身を震わせ、咄嗟にキツく目を閉じた。 俺はロキの両頬にそっと手を添えると、親が子供をあやす時のように優しくなでた。 「悪かったよ、ロキ。ほら、痛いの痛いの飛んでけ」 「…………えっ」 一瞬、ロキは拍子抜けしたように呆然としたが……。 「っ! やめろっ、こら、さわんな!」 途端に、子供扱いが気に食わなかったのか、ロキはつねられた時よりも顔を赤く染め、先ほどよりも激しく抵抗を始めた。 俺は、しばらくそれを笑って受け流していたが……。 ピタリ。 唐突に、ロキが暴れるのを止めた。 (……あれ?) 俺は、突然おとなしくなったロキの横顔を不思議そうに見ていると、ロキはベンチから立ち上がり、そのまま線路の方に向けて駆け出した。
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