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「ロキ?」
遠ざかっていく小さな背中に呼び掛けてみるが、反応が無い。
俺は走って行ったロキの後を追おうとして、ベンチから軽く腰を浮かせかけ、
「来ましたよ。レオンさん」
横合いから、シーマの柔らかな声が聞こえた。
そちらへと視線を向けると、俺の隣に腰掛けていたルキも、どこか嬉々とした様子でロキが駆けて行った方へと視線を走らせている事に気が付いた。
「えっ?」
そうは言われても……。
この状況で『来た』と言えば、無論、列車の事なのだろうが、しかし、ターミナルのプラットホームにはまだ、列車の影も形も見受けられない。
それ以前に、車輪がレールを走る音すら…………いや。
…………ガガン!
その時、微かにだが、遠くの方から車輪の音が聞こえた。
同時に、僅かにだが、足元から低い振動が伝わってきた。
…………どうして分かったのだろうか?
思わず、俺が驚きの面持ちでシーマの顔を見つめると、彼女は少し照れ臭そうにはにかみつつ、頭をこちらに向けた。
「?」
彼女の意図が分からなかった俺は、一瞬、怪訝そうな顔になったが……。
ピョコ。
次に、彼女の艶やかな黒髪の間から、“ビロードのような獣の耳”が二つ出現した。
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