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(あっ)
そうだ、そういえば……。
彼女、シーマ・ルーベルトは、人間と魔物、猫又(ケットシー)の間に生まれた“半妖”なのだ。
半妖とは、人間と魔物の混血の事で、彼らは一般的に常人離れした特技や能力を持っているとされる。
シーマの場合、それはずば抜けて高い身体能力だ。
彼女の頭に生えた獣の耳と、二叉に別れた猫又の尻尾もそれに由来するものだ。
……だが、それと同時に、この世界では一部の例外を除いて、魔物やモンスターなどの化生(けしょう)は共通して悪という認識なのだ。
それゆえ、混血である彼らも“魔物の子供”という色眼鏡で見られてしまう事が多々ある。
しかし、法律でも半妖の人権は保証されていて、差別的な問題も、ここ数十年でずいぶんと改善されたと聞くが、それでも完全になくなったわけではないのだ。
ロト魔導学院でも、表立たないイジメの噂は度々耳にする。
それに……。
なにより、以前、彼女に話してもらった『昔話』は、まさにその内容だった。
「レオンさん?」
「えっ……?」
その時、至近距離から鈴を転がしたような可愛らしい声が聞こえた。
気が付くと、いつの間にか俺の隣にいたシーマが、不思議そうに俺の顔を覗き込んでいた。
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