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シーマは長い黒髪を揺らしながら、ルキとロキが待つホームへと歩を進める。
カツ、コツ……。
小気味よくローファーを鳴らしながら、彼女は、同時にこちらへと手を振る二人に向けて、軽く手を振り返した。
そして、ベンチと列車の中間まで歩くとそこで一度立ち止まり、くるりと振り向いた。
彼女の動きを追い掛けて、その艶(つや)やかな黒髪がなびいた。
見返ったシーマは婉然(えんぜん)とした魅力を纏った、いつも通りの彼女だった。
それに対して俺は小さく頷くと、ベンチから立ち上がりつつ軽く制服のスカートを払い、足早にホームに向かった。
カツ、コツ。
シーマ同様、広々としたターミナルに、ローファーの小気味いい足音がよく響いた。
そのまま、俺が早足に彼女に追い付いた時、
「おーい! 姉ちゃん達、早く!」
気が付くと、既に列車に乗り込んだロキが、丁度車窓から身を乗り出して叫んだところだった。
年相応にはしゃいだ様子のロキだったが、しかし、直後に傍らのルキに注意され、すごすごと車内へと引っ込んだ。
その様子を見た俺とシーマは、共に顔を見合わせたが……。
ふっ、と、俺が失笑してしまい、それにつられるように、彼女からも笑みが零れた。
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