320人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやいや、松本先生。よくぞ江戸から遥々お越し下さいましたな」
松本先生と呼ばれた男性は近藤さんに「久しいな」と挨拶を交わすと隣に居た平隊士にイノシシを渡すと近藤さんに案内され屯所の中へと入っていった。
後で会った土方さんに聞いたことだけど、あの男性は松本良順先生といって江戸では有名な指折りの医者らしい。
今日は隊士達の健康診断を兼ねて屯所の様子を見にきたらしい。
「瑠璃、今日は家事やらなくていいから近藤さんの所に行け」
本当は今から屯所の掃除何だけど…診察で屯所の中を使うからどっちみち出来ないと指摘され小さく頷き近藤さんを探すため中に入る。
近藤さんは意外と直ぐに見つかり何かを松本先生と話していた。
ー近藤さんっ!!
お話し中で申し訳なかったけど、声を出せない以上黙って見ていても始まらない。
私は近藤さんの袖を小さく引いて呼び止めると、止まってくれた。
「どうしたんだい?」と聞かれ土方さんから言われたことを伝えると「じゃあ一緒に行こうか」と了承してくれた。
今から、隊士の方々の様子と屯所の中、そして個人診察もするそうだ。
「近藤局長…この少女は?」
松本先生が少し顔を近づけてそう呟く。
女ってことはもうバレてるみたい。
「彼女は基鷹瑠璃くん。 彼女は迷い人でねぇ。訳あって此所で預かっているんですよ」
近藤さんがそう言うと、松本先生が「そうか…」と重々しく呟いた。
「まだ幼いのに…迷い人としてこの時代に来るとは…辛かったろうに」
私の頭を丸々包み込むほど凄く大きい手が優しく頭を撫でた。
心地よい、程好く低い声と見た目とは異なる優しい手の体温が心に染み渡る。
そのままの状態でー大丈夫です。と伝えると一瞬驚いた表情を浮かべたがすぐに松本先生は笑顔になる。
わざわざ聞かれず、直ぐに理解してくれる人ほど楽なものはない。
松本先生は迷い人を保護したこともあり迷い人のことを理解していると近藤さんがこっそり教えてくれた。
、
最初のコメントを投稿しよう!