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それから私は松本先生と近藤さんの後をついて行き、屯所の中をぐるりと一周した。
何の予告もなしに来た為か部屋でゆったりとしたり、騒ぎあったりしていた平隊士たちが一斉に立ち上がり姿勢を正す。
やっぱりきちんと上下関係がある集団なんだなとこんなところを見ると改めて思う。
気にしないでくれ」と手を軽く振って直ぐ様部屋を出て行く近藤さんを見て皆が首を傾げていた。
明らかに状況を把握出来てませんって顔だ。…まぁわからなくもないけれど。
そして一周して松本先生が口にしたのは「七割…でしょうなぁ」という私には理解出来ないものだった。
けれど近藤さんにはきちんと伝わっているらしく、重々しく「やはり…」と松本先生の言葉を重く受け止めていた。
ー七割とは、どうゆうことですか?
このまま話を進められてもきっとわからないままだ。
せっかく関わらせてもらったのだから理解した上で話を聞きたい。
そう思って松本先生に聞いてみると、「負傷してる隊士の数だ」と短く簡潔に、でもそれだけで伝わるよう教えてくれた。
七割の隊士が負傷??
元気そうな人も沢山いるのに…そうじゃないってこと?
「見るからに大怪我をしている者は少ないが小さな傷から顔色まで含めていうとそれくらいにはなるだろう。」
腕を組んで唸る松本先生の言葉に驚きと感動を覚えた。
たった屯所内を回っただけでそこまでわかった。
私はずっといたのに…それに気づけなかった。
何故だかわからないけれどそれが凄く悔しかった。
「屯所内はとても綺麗に清掃されている。環境的問題とは言えないだろう。」
「と、なると??」
「負傷してからの対処が出来て無いのだろう。誰か、医学に特化した者はおらんのかね?」
それからも二人は何かを話合っていて、時々山崎さんの名前だけが聞き取れた。
「では、その山崎とやらを呼んで下さい。今後の為にも彼には最低限の知識と技術を学んで頂きます」
どうやら、山崎さんが松本先生から直々に医学を学ぶようだ。
私は近藤さんに頼まれて直ぐ様山崎さんを呼びに行く。
近藤さんと、松本先生から詳しく説明を受けると、新撰組の為になるならばと恭しく頭を下げて承諾した。
それから数分の間で山崎くん、師匠と呼びあうようになっていた二人。
山崎さんは元々医学の知識があるらしく次々と知識を得ていた。
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