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ー私のいた時代では結核はそう恐ろしい病ではありません。むしろ、亡くなる方は少ない方なんです。
私がそう伝えると、沖田さんが信じられないといった風に足を投げ出して地面を見つめていた。
そしてー…
「く、あはははっ!!」
突如として沖田さんが笑い始めた。
可笑しくなったの!?とワタワタしていると、沖田さんは「なんか嬉しくって」と言って目頭を軽く押さえた。
「僕達はどうであれ…150年後の時代では進んでいるんでしょ?色々と、さ。それがなんだか嬉しかったんだ…」
そう言って今度は雲ひとつない空を見上げた。
確かに…江戸時代から150年。
今では考えられないほどに医療も、暮らしも、色々なものが良くなった。
平均寿命が80あるんだもんそれがどれほど幸せなことか…。
だけど、その代わりに…心が冷たい気がする。
この時代の人たちみたいに何かに命かけるどか。それほど大切に思える何かがないんだ、きっと。
周りの環境かわ良くなる度に、人の心も比例して渇いていくような気がして…
ー沖田さん、凄いですね。先の未来を思って嬉しくなるなんて…
私なんか、自分が枷から外れる為に足掻くのに必至なのに。
何となく伝えた言葉を「そうかな?」と軽く言って「僕は君も凄いと思うけど?」と珍しく"誉められている"と直接感じることが出来る言葉を貰った。
ー私が、凄いですか?よくわかりません…
首を振りながら視線を反らすと、今度は少し呆れたように鼻で笑って「君って天然だよね」と言われた。
…本当に、不思議な人だ。
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