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「平助ッ!てめぇ夜巡回の当番だったろう?準備して来い!!」
土方さんに一喝されて、トボトボと平助くんが屯所の方へ歩いて行く。
その隣に居た永倉さんに平助くんに伝えてほしいと頼むと快く了承してくれた。
「平助ーッ!瑠璃ちゃんが頑張れだってよー!」
永倉さんが大声で背中を向けていた平助くんに伝えてくれた。
その途端に平助くんの肩がピクリと揺るて明るい笑顔を浮かべて振り返る。
「おうっ!行ってくるぜーっ!!」
大きく手を振ってパタパタと駆けて行った。
…うん。何だか大きく揺れる尻尾と耳が見えたような…。
男の人にこんなこと言っていいのかわからないけど、平助くん可愛らしい。
元気で、明るくて…人懐っこい犬の様だ。
走り去って行く平助くんに手を振って、私も頭を下げて調理場へと向かう。
ちょっと早いけど…行き付けの八百屋さんでキズが付いて売り物にならなくなった余り物を沢山頂いた。
それで簡単に出来る煮物を作ることにした。
この時代は基本食事が薄味だから、味付けもしやすい。
一応、毎回の食事は近藤さんや井上さんと確認してるから、何の心配もなく作れる。
野菜を切りながら、ふと今の何気ない日常を思い出していた。
巡回していても、特に何かあるわけではないと言う。あって、不逞浪士に絡まれるぐらい。
妖怪が姿を現しているわけでもない。
新撰組の方々も山南さんの切腹があってから局中法度を破る者はいない。
…何もかも順調だった。
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