0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
1人の男が、手を額の横に当てては下げを繰り返していた。30分も前からだ。
よりスピーディーにやろうとし、空気を裂く、バッバッという音がする度に、嬉しくて小躍りしたい気持ちになった。
警視庁の1Fのエレベーター前で男が敬礼の練習をする毎に、その辺を歩く職員や、受付の婦警は失笑しているが、当人はどこ吹く風である。
エレベーターの1のランプが付いた。
男はすぐさまエレベーターに向き直る。ドアが開いた。
「貴様か。二宮銀次郎とかいうふざけた名前の奴は」
小隊長だろう。イメージ通りの、無精髭のよく似合う、ナイスミドルだ。
「はっ!自分は、本日付けで警視庁捜査一課、特殊・・・・」
「あー、いい」
「はっ?」
小隊長は面倒臭そうに手を振った。
「とにかく行くぞ」
「はっ!」
俺も、ついにシットに入ったんだ。
二宮は幸せすぎて、何かを思いっきり破壊したいような衝動に駆られた。
最初のコメントを投稿しよう!