第10章

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*************** どうしよう。 自分はどうしても感情を抑えられないらしい。 会長と副会長の話なんて上の空で考えていた。 「……じゃあ、急に襲いかかられて、揉み合った拍子にウィッグが外れた、と」 「そーです」 正直に言うと話なんて聞いていなかったが適当に返事をした。 そんなことを考えている暇はない。 「……なんで、あんな演技してたんだ」 「ウザかったでしょ?」 「俺はな。こいつはどうか知らねえけど」 「ちょっ、止めてください」 副会長が赤くなっているのはどうでもいい。 千尋。 彼に対しての自分の感情は止まらないらしい。 この前トイレに行ったとき、変装していない状態で千尋に会ったのも、抑えられなかった感情のせい。 トイレにいきたくてたまらない、といった顔がとてつもなく可愛かったのだ……。 だから、変装していないのに声をかけてしまった。 「津川?」 「なんでって言われても……趣味だとしか」 会長にはそんなことを言ったけれど。 本当は、千尋に近づくための変装。 びっくりするほどに小説と同じように物事が進んだのだ。 だから、油断した。
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