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どうしよう。
自分はどうしても感情を抑えられないらしい。
会長と副会長の話なんて上の空で考えていた。
「……じゃあ、急に襲いかかられて、揉み合った拍子にウィッグが外れた、と」
「そーです」
正直に言うと話なんて聞いていなかったが適当に返事をした。
そんなことを考えている暇はない。
「……なんで、あんな演技してたんだ」
「ウザかったでしょ?」
「俺はな。こいつはどうか知らねえけど」
「ちょっ、止めてください」
副会長が赤くなっているのはどうでもいい。
千尋。
彼に対しての自分の感情は止まらないらしい。
この前トイレに行ったとき、変装していない状態で千尋に会ったのも、抑えられなかった感情のせい。
トイレにいきたくてたまらない、といった顔がとてつもなく可愛かったのだ……。
だから、変装していないのに声をかけてしまった。
「津川?」
「なんでって言われても……趣味だとしか」
会長にはそんなことを言ったけれど。
本当は、千尋に近づくための変装。
びっくりするほどに小説と同じように物事が進んだのだ。
だから、油断した。
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