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煙草の煙が薄暗い室内を泳いでいる。
「…ふぅ…。」
だいぶ使い古したベッドに寝転がりながら、サイドテーブルの灰皿に煙草を押しつけた。
チカチカと光る携帯電話を開き、今し方届いたばかりのメールを眺めた
“今、何してた?”
送り主は昔の女。数日前に行き着けのバーで偶然再会したばかりだ。
お互い連絡先など、とうの昔に変えていたが懐かしい話に花を咲かせて、またメールアドレスを交換していた。
「…うーん。しっかし、魔が差した、って奴かねぇ…。」
昔の女に未練なんて無いつもりだったが、一人でグラスを傾けている姿に、クラッときて声をかけてしまった。
“煙草吸って、だらけてた。”
時代遅れの端末からは、カチカチと小気味よい音が鳴った。
しかし…、歳を取ると独り言が増えるってのはほんとだな…。
そんな事を考えながら送信ボタンを押し、ひどく簡潔な返事を返した所だ。
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