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そりゃまぁ、昔は愛してるとまで囁いた相手だ。フられたとは言え、ここ最近の日照った男の事情は察してもらいたいもんだ。
「…さて、明日も仕事だ。寝ちまうか。」
秒針のやかましい時計の針は、2時を指していた。
“相変わらず、ひどい生活してるね。(笑)
お姉さんが折角改善してあげたのに。ちゃんとご飯は食べてね。それじゃ、おやすみ。”
翌朝7時。
目覚めて最初に見たのは、昨夜のメールの返信だった。
「余計なお世話じゃ。何がお姉さんだよ、お互いもうオジサンオバサンじゃねぇか。」
数年前まで同棲していた相手に軽く毒づきながら、朝食を取り始めた。簡単なサラダとトースト。ニュースを眺めながらコーヒーと煙草。
まったく、いつも通りの金曜日だ。
―続きまして、連続失踪事件のニュースです―
テレビからは最近話題の事件が流れている所だった。
なんでも、数ヶ月前から数点の遺留物を残し、忽然と姿を消してしまう人がいるらしい。
最近になるにつれ、その頻度が高くなり、ついには行方不明者の数は29人に昇ったそうだ。
「物騒な世の中だねぇ。まぁ、こんな社会じゃあ、トンズラこきたくなる奴がいても不思議じゃねぇか。」
テレビの上の方に映る時計が7時40分を表示した頃には、他人事だと流しながら家を出ていた。
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