武士でなくとも仕える主君を持つ。

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一方部屋では、近藤たちが前夜の話の続きをしていた。 「では、永倉くんと原田くんは一番組、平助と総司は四番組、山南さんが二番組をあたるということでよろしいですか」 近藤の言葉に全員がうなずいた。 「残りは、芹沢先生の采配に任せましょう」 土方は中庭を挟んだ向こうの芹沢たちがいる部屋を横目で見ながら言った。 「では、その旨を伝えて参ります」 山南が立ち上がり部屋を出て行った。 実はこの采配、近藤ではなく、土方が決めたものだった。そして、近藤、土方、井上の名前を出さなかったのにも土方なりの意味があり、それは、芹沢派との人数の差をつけないよう気を使ったものだった。こちらが動ける人数が多ければ、勧誘できる人数も多くなり、勧誘されたものは得てして、勧誘した人間寄りになるのが目に見えていた。つまりは公平を欠かないための采配をとったのである。 更に、土方にはもう一つ、皆が留守の間にしておきたい事があった。浪士組を離れる報告を、近藤の口から八木源之丞にさせることだった。そうしておく事で、八木家自体を近藤寄りに持っていく。土方は表で公平、裏では不公平、二面性をもつ采配を取ったことになる。 そして、各々が与えられた仕事の為、出掛けて行く。中庭に降りてきたスズメが歌うように鳴いている。
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