武士でなくとも仕える主君を持つ。

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「京に残る旨を八木さんに伝えねばならないのだが、近藤さんに頼めないか」 土方は真剣な顔をしていた。 「しかし、芹沢先生と一緒の方が良いのではないか」 近藤は後で揉めるのを嫌っていた。 「いや、後々の進退に関わる問題だ。芹沢先生には任せられん」 土方の口調で近藤は悟った。 「芹沢先生とは、長くは共に働けないということか」 近藤にとっても芹沢は時と場合によっては、目の上のたんこぶと感じる時があった。 「どちらにせよ、俺たちが動き難くなるのは明白」 土方は先の先までを見透かしているようだった。 「いつ話せばいい」 近藤にも危機感は否めないところだった。 「今日だ。皆が戻る前に、俺と近藤さんと源さんで頼みに行こう」 「心得た」 近藤は深くうなずいた。 そんな会話も知る由もない井上は、昼食の支度をすすめていた。
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