武士でなくとも仕える主君を持つ。

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三人はそそくさと昼食を済ませた。屋敷にはまだ誰も戻って来てはいない。 土方は重い腰を上げた。 「近藤さん、源さん行きましょうか」 土方の言葉を合図に三人は立ち上がった。 源之丞は奥座敷で書き物をしていた。 「八木様、井上ですが、失礼しても宜しいですか」 井上は障子の出前で声を掛けた。 「はい。お入り下さい」 京都なまりの源之丞の声は、もの優しく聞こえる。 「失礼します」 井上は障子を開けた。 「実はうちの近藤が、八木様にお話ししたいことがありまして」 井上はそう言って、近藤と土方を先に部屋へと入れた後に続いて入る。 「八木さん、お忙しいところ、手間を取らせて申し訳ない」 まずは、近藤が深々と頭を下げた。それに続いて二人も頭を下げる。 「へぇ。お話とは、何でしゃろ」 源之丞は穏やかに笑った。 「実は、我々浪士組は、この度、帰還の命が下りまして」 近藤の言葉に源之丞は少々驚いた。 「つい先日お見えになったばかりやおへんか」 近藤は更に続ける。 「しかし、我々には思うところがありまして、残ることに決めたのですが、頼るところがないのです。そこで、八木さん協力して頂けないかと思いまして」 近藤が不器用ながらも言葉を並べた。 「協力、言われましても、理由がはっきりせんことには、お手伝いしようがありまへんがな」 源之丞は悟っていた。それでも、説明と大義名分を求めた。 「実は、浪士組自体が幕府ではなく、朝廷のものになりまして、当初の、将軍御上洛を待たずに、江戸に戻ることになりました。しかし、我らは将軍の警護として上京しましたもので、今、戻る訳にはまいりません。しかし、京には知り合いがおらず、住むところもありません。幕府からの金子などは出ないのですが、しばらく我々の面倒を頼みたいのです」 近藤は言葉を尽くした。 「幕府の預かりではのうなるのですか」 源之丞はため息をついた。
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