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「さて、さっそく行くか!」
ギクリとする。
私はキャバクラでは働かないことをまだ伝えられずにいたのだ。
い、今しかない。伝えるぞ!
と口を開こうとしたとき――
プルルルルル♪
熊の携帯から着信音が鳴った。
またタイミングを逃す。
「はい、もしもし。
あぁ、そうか。ちょうどこっちも飯が終わったところだから、あと5分もすればつくよ。
じゃ、頼んだぞ」
そう言って熊は携帯を切った。
なんとなく会話の内容を理解して、次に熊から発せられるであろう言葉を考えると不安になる。
「エアロの方はもう店を開けて準備はバッチリだとよ。
よし、可愛くなりに行くぞ!」
あぁ、やっぱり。
もう美容院の準備ができてしまったなんて。
ここで行くのを断ったら申し訳なさすぎるよね。
熊よりも美容院に気を遣った。
確かにここからエアロまでは5分もかからないだろうし、エアロは有名店だし……。
変なところに連れて行かれるわけではないか。
よし。断るのはエアロに行ってからにしよう。
そうだ、さっきだって熊は「エアロに行ってから決めていい」って言ってたもんね。
何かを断ることが苦手な私はまた先延ばしにしてしまった。
このことが私の運命を大きく変える事となる――
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