2012年12月24日

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 剛は妹の避難所がある方へ、僕に振り向きもせずに全力で走り去って行った。  ……無事でいてくれよ、剛。  姿が見えなくなるまで見送った後、2台のリヤカーを交互に動かしながら府内に9ヶ所だけ設けられている遺体の仮安置所の1つに向けて歩き出した。  西成区だ。  もうすぐ日が暮れるというのに、西成区の方角だけは空が異様に赤く照らされている。  西成区の方へ近付くにつれ、季節は冬だというのに真夏のようなからっとした熱さに変わっていく。
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