最終決戦

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栞は真っ直ぐに二体の屍の元に走る。 栞「招来 ケラウノス」 それと同時進行で一つの槍を召喚した。 その槍の名はケラウノス。 かつてゼウスが使ったとされる槍だ。 栞「はあぁぁぁぁぁ!!」 その声と共に屍に向かい刺突する。 放たれた槍は屍に突き刺さり、その瞬間、目が眩むほどの雷撃が屍を襲った。 これは神話上のケラウノスの能力。 強力な雷撃を放つことが出来る。 雷撃が止み、辺りを静寂が包む。 河村は一連の出来事に手を出すことが出来ず、ただ見ているだけだった。 ハッ、として自らの駒がいた方向を見る。 その視線の先にあったのは、雷撃を食らい炭と化して崩れ去っていく二体の屍。 河村は戦力を全て削り取った、元実験体の少女に目を向ける。 河村「海堂、栞.....!」 忌々しげに少女の名前を呼ぶ。 ・・・そう、ただそれだけ。 河村はただ、名前を呼んだだけだった。 しかし。 それでこの場にいる誰も予想できないことが起こった。 栞「・・・っ!」 ビクリ、と。 河村の声に対して、少女は背中越しでも分かるくらいに震えた。 先程の戦闘が嘘のように怯え出す少女を見て、全てを理解したのは二人だけだった。 しかし、気付いた二人の言動は対極だった。 一人は恐れていたことが起きた、と少女の精神状態を危惧して名前を呼んだ。 嘉山「栞っ!!」 一人は口角を吊り上げ、最も少女の心の傷を抉る呼び方で少女を呼んだ。 河村「試験体13号」 そして、少女の鼓膜を震わせ、脳が反応したのは長年呼ばれ続けた呼び名の方だった。 栞「河村.....さま.....?」
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