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栞「・・・! ボ、ボクは何を.....」
完全に無意識の状態で口ずさんだ言葉に栞は混乱する。
なぜ、自分は敵である筈の眼前の男を“さま”などをつけて呼んだのか。
だが、いくら考えても答えは出ない。
理由は簡単だ。
その記憶もろとも、悠斗が消しているから。
今、無意識にさまをつけて呼んだのは悠斗が消しきれなかった奥深くに刻み込まれた、いわば習慣のようなもの。
数年間、そう呼ばされ続けたことにより染み込んだ呼び方。
しかし。
河村にとってはそれで十分だった。
河村(一度にあれだけの数を召喚すれば“次”を召喚するまでにインターバルがある.....)
そう、河村は一度に召喚できる屍の数が約50しか召喚できないだけだ。
総合的にはまだストックはある。
ただし。
先程の精鋭たちより少し戦力が低下するが、それでも嘉山たちを相手にするには十分な強さを持っている者ばかりだ。
河村(警戒すべきは“これ”だけで十分。しかし、少しは記憶が残っているだろうが.....神条 悠斗のことだ。“これ”が首輪をはめて無いところを見ると、大方の記憶は消されているのだろう)
持ち前の推察力で物事を捉える。
まるでパズルのように、会話や出来事の断片的なパーツを組み合わせて一つの事実を推測していく。
河村(私に服従するようには育てたが.....完全な復活は臨めないだろう。ならば、せめて壊して戦力を削る.....!)
完全に記憶を蘇らせて、こちら側に寝返らせることが不可能だと考えた河村は即座に次のプランを実行する。
それは栞の精神を破壊し、戦闘不能にすること。
次の召喚までの時間稼ぎをしつつ、話術によって戦力を削る。
そう、作戦を立てた。
試験体として成功作だったので少し勿体ないと感じるくらいで、その決断に至るまでにあまり躊躇はなかった。
そして、なんの躊躇いもなく、少女の心を壊しにかかる。
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