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俊輔は、別に優等生でもなかったし、特別リーダーシップがあったわけでもなかった。
サッカー部の朝練が休みになる雨の日は必ず寝坊してHRを遅刻していたし、授業中に寝ていて怒られることもしょっちゅうだった。
ただ、みんな俊輔のことが好きだった。
だから、その真っ直ぐな言葉に胸を打たれたんだと思う。
そして─だからみんな、俊輔がいなくなってから、その名前をほとんど口にしないんだと思う。
思い出すと、会いたくなるから。
思い出すと、哀しくてたまらなくなるから。
「きりーつ」
日直ののんびりした号令に合わせ、みんながガタガタと椅子の音を立てながらダルそうに立ち上がる。
「れーーー」
向居先生が頭を下げた瞬間、今度は窓際から廊下側に飛んでいく白い軌跡が目の端に映った。
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