-2-

8/8
21109人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
 俊輔は、別に優等生でもなかったし、特別リーダーシップがあったわけでもなかった。  サッカー部の朝練が休みになる雨の日は必ず寝坊してHRを遅刻していたし、授業中に寝ていて怒られることもしょっちゅうだった。  ただ、みんな俊輔のことが好きだった。  だから、その真っ直ぐな言葉に胸を打たれたんだと思う。  そして─だからみんな、俊輔がいなくなってから、その名前をほとんど口にしないんだと思う。  思い出すと、会いたくなるから。  思い出すと、哀しくてたまらなくなるから。 「きりーつ」  日直ののんびりした号令に合わせ、みんながガタガタと椅子の音を立てながらダルそうに立ち上がる。 「れーーー」  向居先生が頭を下げた瞬間、今度は窓際から廊下側に飛んでいく白い軌跡が目の端に映った。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!