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─とくん。
心臓が何かを予感したように高鳴り、胸の内側をつついている。
これは、何だろう。
─とくん、とくん、とくん、
胸の中が、まるでマドラーか何かで掻き混ぜられたようにグルグルする。
─とくん。
わたしは昂る気持ちを抑え付けるように胸元に手を当て、足を踏み出した。
片側に寄せられた引き戸の、二重になったガラス小窓からそっと中を覗く。
─誰……?
窓際に誰かの背中が見える。
竦む足を引きずるように進め、教室の入口に立った。
早鐘のような鼓動に息苦しささえ感じながら、中に足を踏み入れる。
すると、─。
気配を感じたのか、その背中がゆっくりとこちらを振り返った。
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