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「あー、あれか。
またどうせあのメガネ女部長に捕まったんだろ。
気に入られてるからな、お前」
「……気に入られてるって言うのかな、あれ……」
笑いながらそう言って、ぎこちない足取りで自分のロッカーまで真っ直ぐに進む。
扉を開けたものの、自分が何を探しに来たのか、一瞬本気で思い出せなかった。
「どした、忘れ物?」
「……うん、ちょっと……」
傘が無くなってしまったことを言いたくなくて、返事をぼかす。
体操着や図書室で借りた本の奥を探ってみたけれど、やはり置き傘は入っていなかった。
「おい亜優、ちょっと来てみ。すげーから」
見ると、俊輔の背中は身を乗り出すように窓の外を見下ろしている。
「なあに?」
「いいから」
ロッカーの扉を閉め、近づいていくと、俊輔がくいくいと校庭を指さした。
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